多原子イオンとは?
多原子イオンとは、2個以上の原子が結合した全体として電荷をもつ原子の集まりで、化合物の中では1つの単位としてふるまいます。一般的な例は、水酸化物イオン(OH⁻)、硝酸イオン(NO₃⁻)、炭酸イオン(CO₃²⁻)、硫酸イオン(SO₄²⁻)、リン酸イオン(PO₄³⁻)、アンモニウムイオン(NH₄⁺)です。ほとんどの多原子イオンは負で、多くは酸素を含みます。
電荷をもつ原子の集まり
多原子イオンの内部では、原子は水分子を結びつけているのと同じ種類の結合である共有結合で結びついています。全体としては、電子が陽子より多いか少ないので、正味の電荷をもちます。電荷はイオン全体のもので、1つの原子のものではないため、SO₄²⁻ のように化学式全体の右上に書きます。Na⁺ や Cl⁻ のように1個の原子からなるイオンは、単原子イオンとよばれます。
化合物の中では、多原子イオンは1つのイオンのようにふるまいます。硝酸ナトリウム NaNO₃ では、ナトリウムイオン(Na⁺)と硝酸イオン(NO₃⁻)がイオン性化合物をつくり、この塩が水に溶けても、硝酸イオンは1つの単位としてまとまったままです。
代表的な多原子イオンとその電荷
電荷が−1のイオンには、水酸化物イオン(OH⁻)、硝酸イオン(NO₃⁻)、亜硝酸イオン(NO₂⁻)、炭酸水素イオン(HCO₃⁻)、酢酸イオン(CH₃COO⁻)、過マンガン酸イオン(MnO₄⁻)、シアン化物イオン(CN⁻)、塩素酸イオン(ClO₃⁻)、過塩素酸イオン(ClO₄⁻)があります。
電荷が−2のイオンには、炭酸イオン(CO₃²⁻)、硫酸イオン(SO₄²⁻)、亜硫酸イオン(SO₃²⁻)、クロム酸イオン(CrO₄²⁻)、二クロム酸イオン(Cr₂O₇²⁻)、過酸化物イオン(O₂²⁻)があります。リン酸イオン(PO₄³⁻)は最も一般的な−3のイオンです。最もよく出会う2つの陽イオンは、アンモニウムイオン(NH₄⁺)とオキソニウムイオン(H₃O⁺)で、どちらも+1です。
水酸化物、シアン化物、過酸化物は、複数の原子を含むのに、英語では -ide で終わる名前(日本語では「〜化物」)になることに注意しましょう。-ide の名前の多くは、塩化物イオン(Cl⁻)や酸化物イオン(O²⁻)のような1原子のイオンのものなので、これらは例外として覚えておく価値があります。
「〜酸イオン」(-ate)と「亜〜酸イオン」(-ite)のパターン
多くの多原子イオンはオキソ酸イオンで、1つの元素が酸素と結合したものです。ある元素が同じ電荷をもつ2種類のこうしたイオンをつくるとき、酸素原子が多いほうは「〜酸イオン」(英語では -ate)、酸素原子が1個少ないほうは「亜〜酸イオン」(英語では -ite)となります。硝酸イオンは NO₃⁻、亜硝酸イオンは NO₂⁻、硫酸イオンは SO₄²⁻、亜硫酸イオンは SO₃²⁻ です。電荷は同じままで、酸素原子の数だけが変わります。
塩素は4つの系列をつくり、2つの接頭辞が加わります。「過(per-)」は「〜酸イオン」より酸素が1個多いこと、「次亜(hypo-)」は「亜〜酸イオン」より酸素が1個少ないことを意味します。過塩素酸イオン(ClO₄⁻)、塩素酸イオン(ClO₃⁻)、亜塩素酸イオン(ClO₂⁻)、次亜塩素酸イオン(ClO⁻)で、最後のものは家庭用の漂白剤に含まれるイオンです。臭素とヨウ素も同じパターンで、臭素酸イオン(BrO₃⁻)、ヨウ素酸イオン(IO₃⁻)、過ヨウ素酸イオン(IO₄⁻)などがあります。
水素を加える
負の多原子イオンに水素イオン(H⁺)を加えると、負の電荷が1つ小さい新しいイオンになります。炭酸イオン(CO₃²⁻)は炭酸水素イオン(HCO₃⁻、重炭酸イオンともいいます)に、硫酸イオン(SO₄²⁻)は硫酸水素イオン(HSO₄⁻)になります。リン酸イオンは1個または2個加えられます。PO₄³⁻ はリン酸水素イオン(HPO₄²⁻)になり、さらにリン酸二水素イオン(H₂PO₄⁻)になります。
重曹は炭酸水素ナトリウム NaHCO₃ で、Na⁺ 1個と HCO₃⁻ 1個がつり合っています。
多原子イオンを使った化学式の書き方
イオン性化合物の化学式を書くには、全体の電荷がゼロになるようにイオンを組み合わせ、陽イオンを先に書きます。多原子イオンが複数必要なときは、かっこで囲み、その後ろに数を書きます。イオン内部の添え字は決して変えてはいけません。別のイオンになってしまうからです。
水酸化ナトリウム:Na⁺ と OH⁻ は1:1でつり合うので、化学式は NaOH です。硝酸カルシウム:Ca²⁺ には NO₃⁻ が2個必要なので、Ca(NO₃)₂ です。硫酸アンモニウム:NH₄⁺ 2個が SO₄²⁻ 1個とつり合うので、(NH₄)₂SO₄ になります。硫酸アルミニウム:Al³⁺ 2個(合計+6)が SO₄²⁻ 3個(合計−6)とつり合うので、Al₂(SO₄)₃ になります。
化合物に名前をつけるには、陰イオンの名前を先に、陽イオンの名前を後に読みます(日本語では「炭酸カルシウム」のように陰イオン、陽イオンの順)。CaCO₃ は炭酸カルシウムで、チョークや石灰岩の主成分、KMnO₄ は過マンガン酸カリウムです。
重要ポイント
- 多原子イオンは、共有結合でつながった全体として電荷をもつ原子の集まりで、1つの単位としてふるまいます。
- 硝酸イオン(NO₃⁻)、硫酸イオン(SO₄²⁻)、リン酸イオン(PO₄³⁻)のようにほとんどが負で、アンモニウムイオン(NH₄⁺)は最も一般的な正のイオンです。
- 「〜酸イオン」(-ate)は、対応する「亜〜酸イオン」(-ite)より酸素原子が1個多く、電荷は同じです。
- H⁺ を加えると電荷は負が1つ小さくなります。CO₃²⁻ は HCO₃⁻ になります。
- Ca(NO₃)₂ のように、化学式に多原子イオンが複数必要なときはかっこを使います。
確認問題
このレッスンの簡単な問題が3つあります。
1. 硝酸イオンの化学式はどれですか。
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NO₃⁻ — 硝酸イオンは窒素1個と酸素3個で、電荷は−1です。NO₂⁻ は亜硝酸イオンです。2. 炭酸イオン CO₃²⁻ に H⁺ を加えると、どのイオンができますか。
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HCO₃⁻ — H⁺ を加えると電荷は負が1つ小さくなるので、炭酸イオンは炭酸水素イオン HCO₃⁻ になります。3. 硝酸カルシウムの正しい化学式はどれですか。