極性溶媒の例とその極性

極性溶媒とは、電荷の分布に偏りのある分子でできた溶媒で、各分子はわずかに正の側と、わずかに負の側をもっています。極性溶媒は、「似たものは似たものを溶かす」という原則にしたがって、イオン性物質や極性物質をよく溶かします。極性は、誘電率(大きいほど極性が高い)やデバイ(D)単位の双極子モーメントで比較されることがよくあります。以下の値は室温付近でのおおよその値です。

  1. 水(H₂O):極性プロトン性。誘電率は約80、双極子モーメントは1.85 D。塩、糖、酸、塩基を溶かします。
  2. ホルムアミド(HCONH₂):極性プロトン性。誘電率は約110で、水よりもさらに高い。多くの塩を溶かします。
  3. 炭酸プロピレン(C₄H₆O₃):極性非プロトン性。誘電率は約65、双極子モーメントは約4.9 D。リチウム電池の電解液に使われます。
  4. ギ酸(HCOOH):極性プロトン性。誘電率は約58。最も単純なカルボン酸です。
  5. ジメチルスルホキシド、DMSO((CH₃)₂SO):極性非プロトン性。誘電率は約47、双極子モーメントは約4.0 D。極性化合物も、多くの非極性化合物も溶かします。
  6. グリセリン(C₃H₈O₃):極性プロトン性。誘電率は約43。3つのO–H基をもつため、粘性が高く、水と完全に混ざり合います。
  7. エチレングリコール(HOCH₂CH₂OH):極性プロトン性。誘電率は約38。自動車の不凍液の主成分です。
  8. アセトニトリル(CH₃CN):極性非プロトン性。誘電率は約37、双極子モーメントは約3.9 D。クロマトグラフィーで広く使われます。
  9. ジメチルホルムアミド、DMF(HCON(CH₃)₂):極性非プロトン性。誘電率は約37、双極子モーメントは約3.8 D。繊維やコーティング剤の製造に使われます。
  10. メタノール(CH₃OH):極性プロトン性。誘電率は約33。最も単純なアルコールで、飲むと有毒です。
  11. エタノール(C₂H₅OH):極性プロトン性。誘電率は約25。水とどんな割合でも混ざります。
  12. アセトン((CH₃)₂CO):極性非プロトン性。誘電率は約21、双極子モーメントは約2.9 D。多くのマニキュア除去液の溶媒です。

プロトン性溶媒と非プロトン性溶媒

水、メタノール、ギ酸などの極性プロトン性溶媒は、酸素や窒素に結合した水素原子をもつため、水素結合を形成でき、水素イオンを供与できます。アセトン、DMSO、アセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒は、極性はありますが、O–H結合やN–H結合をもちません。溶媒は反応の速さに影響するため、実験室ではこの選択が重要です。一部の置換反応は、極性非プロトン性溶媒中のほうがはるかに速く進みます。

極性が高いことは、誘電率が高いことを意味するとは限らない

酢酸はO–H結合をもち、双極子モーメントも水に近いのですが、分子どうしが対になって二量体をつくるため、誘電率は約6にすぎません。比較のために挙げると、ヘキサンのような非極性溶媒の誘電率は約2です。

その他の例